「権力」に操られる検察 【三井環】

「権力」に操られる検察 (双葉新書)

「権力」に操られる検察 (双葉新書)

検察をよく知る著者による本です。
検察のヤバさもひしひしと伝わってきて、大変面白かったです。

野仲元幹事長の起訴猶予処分が無理筋なのは、裁判を通じても明らかになった。彼は、そもそも料亭「口悦」での密談に参加していないと主張している。一億円の小切手の受け渡しの場所に、自分はいなかったと言っているのだ。
二〇〇五年一〇月24日、野仲元幹事長は証人尋問でこう主張している。
「口悦」で会食があった二〇〇一年七月二日、自分は別の宴会に出席していた。さらに、妻の姉が危篤になったため、名古屋まで見舞いに行かなければならなかった。七月二日、午後八時三三分発の新幹線のぞみに乗って自分は名古屋へ向かっている―。
刑法第一六九条には、「偽証罪」が厳然と記されている。

≪法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、3月以上10年以下の懲役に処する。≫

野仲元幹事長の証言がウソだとすれば、この偽証罪が適用されることになる。アリバイは成立するのだろうか。
答えはノーだ。
何と、七月二日に野仲元幹事長が見舞いに行ったという病院には、妻の姉が入院していた記録はない。さらに驚くべきことに、二〇〇一年七月二日、午後8時33分発の新幹線のぞみは走っていなかった。これが何を意味するのか、まったく呆れるほかない。
アリバイ操作の基礎的な部分が、なぜ看過されてしまったのだろう。どうやら検察は、野仲元幹事長のアリバイ操作をろくにやらなかったか、敢えて肝心な部分を見逃したとしか思えない。
(中略)
橋本元総理に至っては、「一億円の小切手をもらったことなど記憶にない」。これだけで済んでいる。一億円もの小切手をもらっておきながら、忘れたなどというバカな話があるだろうか。だが、現実はそのバカな話が認められ、捜査は終わってしまっているのである。
もし私が検察官であれば、少なくとも村岡元官房長官とともに、野仲元幹事長も政治資金規正法違反で起訴しただろう。
(中略)
検察の主張によれば、一億円の裏ガネ処理が決められたのが二〇〇二年三月十三日の橋本派幹部会でのこと。出席者は野中氏、青木氏、上杉光弘・元自治相、村岡氏、瀧川氏で、橋本元総理は病気により欠席していた。「会長代理」の村岡氏がそこで中心となって裏ガネ化の決定をしたとされた。だが、村岡氏は一億円の話はそもそも知らず、幹部会で話されたこともなかったと公言している。
客観的にみれば、トカゲの尻尾切りで村岡元官房長官だけに罪を押し付けたとしか思えないのである。

(p.61-64)

こんなのでよいのでしょうか?

ちなみに、本書では鈴木ムネオは「検察にはめられた被害者」として堀江さんとともに熱く語っています。