経済を動かす単純な論理 【櫻川昌哉】

経済を動かす単純な論理

経済を動かす単純な論理

藤沢さんのブログで紹介されていて読んでみた。

おもしろかったのは、今まで何の意味もない金融市場でのいわゆる「マネーゲーム」が、重要な意味を持っているということ。

しかしよくよく考えてみると、こうしてマネーゲームに興じてくれる人がいるおかげで、この投資会社は、株式を売却して、新しい企業に出資できるのです。逆に、出資した会社の株式を売ることができないとしたら、投資会社はどうするでしょうか。そもそも投資会社は出資を見送り、この若手企業家の会社は世の中に存在しさえなかったかもしれない。なぜなら、株式を売れないとしたら、この投資会社は、出資した会社が成功するかどうかのリスクだけでなく、出資した会社の業績が悪化した時に株式を売り抜くことができないリスクと、もっと有望な会社が現れた時に出資し損ねるリスクを抱えてしまうことになるからです。
ところが株式市場が整備されていて、マネーゲームに興じてくれる人々が大勢いれば、売りたいときに株式を売ることができる。そして株式を売って手に入れた資金で、さらなる投資機会に挑戦することができる。つまり、逆説的ですが、この投資会社は、株式を売却することができるからこそ出資したのです。
こうして考えていくと、金融がスムーズに回ることで想像される価値は、最初に出資した投資会社、投資会社が売却した株式を買った人、その人の株式を買った人、そして……と、株式の売却に関わったすべての人の共同作業といえます。これらのすべての人がこの会社の価値、つまり企業価値を支えているといっても過言ではありません。そう考えると、出資した投資家は価値を創っているけれども、ネット取引で株をやっている投資家は価値を創っていないと考えるのは間違いであることに気づきます。むしろマネーゲームに夢中になる人たちによって支えられる「株式市場の厚み」こそが、株式による資金調達という仕組みを作っているといえるのです。

後半は結構難しい話も出てきますが、全体的には面白くて役に立つ良書だと思います。